すべての自転車漫画はここから始まった! ロードレース漫画の偉大なる原点『シャカリキ!』

レビュー

『弱虫ペダル』が好きですか?

その熱さ、その緊迫感、そのキャラクターたちの輝き——そのすべての源流に、この漫画があります。

曽田正人『シャカリキ!』。

近代ロードレース漫画の原点にして、いまだ超えられていない不滅のバイブル。

『め組の大吾』『Capeta』など、極限に挑む天才を描き続けてきた曽田正人先生のキャリアの中でも、この作品の熱量は別格です。

今回は、すべての自転車漫画ファンに、いや、すべてのスポーツ漫画ファンに伝えたい『シャカリキ!』の凄さを、全力で語らせてください。

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「坂やったら、誰にも負けへん!!」ひたすら坂の頂点を目指す少年・テルの物語

主人公は野々村輝(ののむら てる)

幼い頃から、ただ一つのことに異常な執念を燃やしてきました。自転車で坂を登ること。

関西からロードレースの名門・亀ヶ丘高校(東京)に進学したテルは、本格的にレースの世界へ足を踏み入れていきます。

彼の坂への執念は異質。

どんなに苦しくても、足をつかず登りきる。

立ち漕ぎ——ダンシングを駆使し、激坂を制していく。心臓が破裂しそうになっても、足が壊れそうになっても、ただ「坂の頂上を一番に駆け抜ける」ことだけにすべてを賭ける、究極のクライマー。

その姿は、格好いい。そして、少し恐ろしい。

「これは人間の限界を超えようとしている男の物語だ」——そう思わせる説得力が、テルというキャラクターには確かにあります。


魂が震える! 本作に【スポーツ漫画に必要なすべての要素】が詰まっている3つの証明

【才能と執念】「一番高いところ」へ命をかける、野々村輝の圧倒的なクライマー魂

テルが見せる執念は、単純な「才能の物語」では終わりません。

坂を登ること。それだけに人生のすべてを捧げる男の生き様には、才能という言葉では説明できない、もっと根源的な何かがあります。

息が苦しい。視界が霞む。足が痛い。それでも、ペダルを回す手を止めない。

「一番高いところに、一番先に到達する」——その一点だけのために、自分の体を壊しかねないところまで突き進んでいく。

この姿を見て、痺れない人はいないはずです。人間の本気とは、こういう形をしているのかと思わされます。


【最強のライバル】正反対なライバル 由多比呂彦との極限の死闘

王道のスポーツ漫画には、対照的なライバル、、、「壁」が必要です。

『シャカリキ!』には、その壁が完璧に用意されています。

同高校の先輩、オールラウンダーの鳩村大輔

輝と同じクライマーコロンビア出身の坂バカ、ハリス・リボルバー

彼らとのインターハイ、ツールドおきなわでの激突は、ただの勝ち負けを超えた**「魂の削り合い」**です。テルが彼らに挑むたび、こちらの心拍数まで一緒に上がっていくような、そんな緊迫感がページから溢れてきます。

なかでも

同級生にして輝と正反対のエース、スプリンター 由多比呂彦

何もかもがテルと正反対のユタ、しかし自転車にかける想いは同じ。
ツール・ド・おきなわでは総合優勝を懸けて火花を散らす二人の姿はマンガ誌に残るシーンといえるでしょう。

才能の開花、超えるべき壁、自己犠牲——スポーツ漫画に必要な黄金比率の要素が、この物語には完璧な形で詰まっています。


【挫折・再生】落車、絶望、そしてクライマーとして進化する完璧なドラマ性

ここが、『シャカリキ!』が単なる「天才の無双物語」で終わらない最大の理由です。

物語の後半、テルは落車による大怪我を経験します。

それまで坂を登り続けてきたテルが、絶望を味わい、もがいた結果、——さらに「坂バカ」へと覚醒していきます。

リハビリのため地元に戻り少しずつ坂を上り始めるテル。

テルの坂への執念はより強くなり。ひたすら坂だけを上るようになります。
怪我をしたことでテルは坂に対する異常とも言える執着心と圧倒的な強さを手に入れることになります。

一つのことを突き詰めることで届く高み、そしてその危うさ。この後半の展開はあるからこそ、『シャカリキ!』は単なるスポーツ漫画ではなく、天才とは何かを強烈に描く物語として完成しています。


読者を過呼吸にさせる! 曽田正人が描く、息を呑むバトルの臨場感と「無言」の演出力

曽田正人先生の画力と演出力は、本当に異常です。

スピード感を生み出す圧倒的な集中線。限界を超えたキャラクターたちの表情。そして——レース終盤、セリフを一切排除し、「ハァハァ」という息遣いとペダルを漕ぐ音だけで見せる演出。

言葉がないからこそ、伝わってくる緊迫感があります。読んでいるだけで、自分の呼吸まで浅くなっていく。

「何も語らないことで、すべてを語る」——この演出力こそが、後発の自転車漫画たちが必ず参照することになった、曽田正人という作家の真骨頂です。


まとめ:何かを忘れてしまった大人にこそ読んでほしい

『弱虫ペダル』をはじめ、数多くの自転車漫画がこの作品の影響を受けています。それほどまでに、『シャカリキ!』という作品が築いた地平は大きいのです。

才能。執念。ライバル。挫折。絆。再生。

スポーツ漫画に必要なすべての要素が、完璧な黄金比率でここにあります。

何かに本気で打ち込んだ記憶を忘れてしまった大人にこそ、読んでほしい。

これぞスポーツ漫画の教科書。魂が震える、最高の一冊です。


曽田正記『シャカリキ!』/ 秋田書店

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