「もう歳だから」「今さら始めても遅い」―そんな言葉が、頭のどこかにこびりついていませんか?
新しい挑戦を前に足がすくんでいる人、何かをずっと諦めてきた人。この漫画はそんなあなたに勇気をくれる作品です。
どうも、めじろです。今日ご紹介するのは、マンガ『海が走るエンドロール』(たらちねジョン著)。2026年5月に全9巻で堂々完結した傑作です。今回改めてイッキ読みしたのでレビューしたいと思います。読み終えたとき、もう一度一巻を眺めてしまうほど余韻に浸れる漫画でした。
「船を出すかどうか 誰でも船は出せる」
「私はあの日 目の前に海があることに気づいた」
あらすじ
作品基本情報
作者 たらちねジョン
出版社 秋田書店
掲載誌 ミステリーボニータ
発表期間 2020年10月6日 – 2025年11月6日
巻数 全9巻
主人公・茅野うみ子は65歳。夫に先立たれ、長年寄り添ってきた日常がふと静かになったとき、彼女は数十年ぶりに映画館を訪れる。
そこで出会ったのが、美大映像専攻の学生・濱内海(通称カイ)。映画のようにきらめく彼の言葉が、うみ子の中で眠っていた何かを揺さぶる。「わたし、映画を作る側の人間だったのかもしれない」と。
そして彼女は65歳にして美大を受験し、映画制作という荒波に飛び込んでいきます。
心を震わせる3つの見どころ
65歳からの挑戦 ― 綺麗事じゃない、リアルな葛藤
「何歳からでも遅くない」。よく聞く言葉ではありますが。でもこの作品はそれを、綺麗事として描かないのがすごいんです。
うみ子さんが美大に入ってからの描写は、とにかくリアルです。10代・20代の学生に囲まれて、機材の使い方もわからない。映画の語彙も、批評の文脈も、感覚的なスピードも、全部ゼロから。プライドが折られる瞬間も、情けなくて泣きたくなる夜も、すべてが丁寧に描かれます。
それでも彼女が諦めないのは、「うまくなりたい」ではなく「撮らずにはいられない」という衝動があるから。その純粋さが、読んでいる僕の胸にも深く刺さりました。
年齢ゆえの不器用さと、年齢だからこそ持てる視点、そのふたつをクリエィティブに反映させたとき、うみ子さんの映画は誰にも真似できない何かを帯びていきます。
カイくんとの関係 ― 世代を超えたバディ感が最高
濱内海(カイ)とうみ子、似ていないようでどこか通じ合う二人の関係が本当に素晴らしいんです。
カイはうみ子さんを「おばあちゃん」扱いしない。歳上だからと遠慮もしないし、年下だからと見下しもしない。ただ純粋に「この人の映画が見たい」という目で彼女を見ている。そのまっすぐさが、うみ子さんに、どれほどの勇気を与えることか。
同じ情熱をもって映画製作に臨む、うみ子さんの姿は、孤独に映画製作カイに静かに勇気を与えます。ふたりの間に流れる空気は、恋愛でも師弟でもない、「表現者同士」「戦友」として特別な関係を育んでいきます。
「海が走る?」 ― たらちねジョン先生の映像的な心理描写
この作品のタイトルにもなっている「海が走る」という表現。本作では、心が激しく動く瞬間が海や波、船で表現されます。
「感情の映像化」。たらちねジョン先生は、その瞬間をコマの中で本当に「海が走る」ように描くんです。
波が走り、足がすくわれ、ページそのものが揺れるような…そんな錯覚を覚える圧倒的な画の力。セリフのないコマが語るもの、余白の使い方。静止しているのに、画面・心理すべてが動いて見える。
映画という「動く作品」を題材に選んだこの作品を、静止した紙の上で映像的に体験させてしまう。その矛盾を当然のように成立させているたらちねジョン先生の画力と構成力は、圧倒的という言葉しか出てきません。
完結&アニメ映画化の最新情報
最新情報
2026年5月、『海が走るエンドロール』は全9巻で完結しました。綺麗に、そして丁寧に幕を閉じています。完結を経て改めて1巻から読み返すと、序盤のさりげない演出が伏線だったと気づいて、また感動してしまいます。
そして2027年にはアニメ映画化も決定。映画の中で映画を撮る物語が、スクリーンへ。あのたらちねジョン先生の映像的な演出が、本物の映像になったとき、いったい何が起きるのか—想像するだけで心が騒ぎますね。
全巻揃えて映画公開前に読み終えておくのがおすすめですよ!!
以上、めじろの『海が走るエンドロール』レビューでした。ではまた。

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